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執筆者の写真功一 中川

「確率思考の戦略論」を解説【やさしい統計学9】

数学マーケティングの力!ベストセラービジネス書

「確率思考の戦略論」を解説【やさしい統計学9】


ビジネスパーソンのためのやさしい統計学「第9回」





※YouTubeにて各シリーズ連載中


中川先生のやさしいビジネス研究、ビジネスパーソンのためのやさしい統計学・第9回を解説します!


今回は、「確率思考の戦略論」の話をしていきたいと思います。この「確率思考の戦略論」という言葉を聞いて、どこかで聞いたことあるなって思ったら、よく勉強されていらっしゃるのだと思います。実はこれ、ちょっと前に大ヒットベストセラーになりましたビジネス書のタイトルなんですけども、今回、この本を解説しながら、より汎用化して、様々な状況で使えるように、「使える確率の理論」を説明したいと思います。

話題になったこの「確率思考の戦略論」。著者は、P&Gでマーケティングキャリアをスタートしまして、その後USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)に入社し、ここでチーフマーケティングオフィサーとして、同社のV字回復の立役者の1人となりました森岡穀さんです。


森岡穀さんは、その後も様々なマーケティングで成功を収めておりまして、現代日本のトップマーケターとして知られる方。で、この方の基本思想がぐっと詰め込まれているのが、この「確率思考の戦略論」。


今回この本を解説するという形をとっていきながら、ビジネスにおける確率論の使い方の最も大切なところをしっかり学んでいきましょう!


あわせて今回は、皆さんに、統計学における「確率論」の重要概念を学んでいただきます。

それが「条件付確率」というもの。この「条件付確率」を学び直す学べることができるというお得なコースに今回はなっております。


条件付確率とは?

「条件付確率」というのは、ある条件のもとで別の事象が起こる確率。下図のように、二つ(以上)の円を書いたときの円の重なり部分の割合というようなものが、条件付確率です。


例えば、私が20代女性向けの化粧品をこの動画で売ろうと思った場合には、こういうことを考えなければいけません。


・この動画の視聴者のうち、女性の割合は何%か

女性である割合が、1割だったとしたら、女性向け商品売っても事業としては難しい。なので、女性の割合というのをまず出す必要があります。


・視聴している女性が20代である確率

しかし、女性なら誰でもいいわけじゃなくて、売りたい商品は20代女性のための商品です。だとすると、20代である割合も考えなければいけない。これが、条件付確率の考え方です。「動画の視聴者全体のうちの女性である割合」と「動画視聴者全体の20代の方の割合」、この二つの掛け算で求まってくるのが【女性という条件のもとで20代】ということが起こる確率となってくるわけなんです。


ですから、この丸の重なり合いを頭の中でイメージしながら、その割合がなるべく大きければ大きいほど、マーケットポテンシャル、ビジネスチャンスがあるんだということになるわけなんです。


これは森岡さんのみならず、マーケティング分野では非常に広く使われている手法です。


例えば商品Aが売れるという事象がどういうふうに生じるかというと、

商品Aを知っているかどうか

知っている人の中からしか購買は起こらないので、知っている割合。

商品Aが好みに合う確率

次にその商品が自分の好みと一致する割合という二つ目の円を書いて、自分はあの商品知ってるんだよな、そしてそれって自分の好みに合うんだな、二つの縁で重なっているかを見る。これでもまだ、商売は成り立たない。

商品Aがあなたの手の届く生活圏内で売られている確率

最後のこの条件を含めた、3つの円を満たしたこの範囲内の中でしか、購買ということが起こらない。


このように考える理由は何か、皆さんは分かりますか?

マーケティング策として、何をすべきかを、分解して考えることができるのが大きいわけです。3種類の確率を出して、その中でも弱点となっていて、かつ、伸ばしやすいものを狙う。そのための方法を考えるのが、マーケティングの仕事になっていくわけなんです。


実はこれ、数学的に計算が可能なんです。今の条件を満たした人というのがどれくらいいて、どれくらいの売上高になるかというのが、計算できる。つまりは、売り上げが推定できるし、マーケティング策によって改善すれば、どのくらい売り上げが伸びるのか、という推定もできる


商品Aが知られている確率。無作為アンケートなどで、簡単に取れます。

8割の人が知っていますね、ということになれば、最初の確率はゲット。そして、十分な確率だと判断できます。ここからさらに伸ばすのは非常に難しいのはイメージできるはずです。


そして第2には、この商品が消費者の好みに合っている確率。これも同様に、アンケート等でデータを取ることができる。「私、こういう商品が好みなんだよね」というのもデータを取ってみて、この商品を好きって人が何割いるかを出せる。たとえばそれが大体3割ぐらいだったとしましょう。とすると、先ほどの80%よりも、この選好率30%を改善するほうが効果が大きくなりそうですね。


そして、続いては生活圏内にこの商品を売っているかどうかですね。コスメみたいな商品だとして、配荷率=置いてある確率という言い方をしますけれども、全国津々浦々の小売り・チェーン店とかネットショッピングとか、それぞれでどれくらい扱ってくれているかというのが、売上高に直結してくる。大体、全国に何店舗ぐらいあって、うちの会社で卸しているのはこの範囲内で15%ぐらいだなということになると、この確率も求まったことになる。


知られている割合が0.8、それが顧客の嗜好に合う確率0.3、さらにこの商品が扱われている確率が0.15ということでいえば、全ターゲット顧客が何十万人かいるとして、およそ自社の商品を買ってくれる人は何万人ぐらいになるという推定ができることになるわけです。


知られている確率 × 嗜好に合う確率 × 配荷率


単純にこの計算でよいわけですよね。


実際のところ、P&Gさんとか多くの会社では、この計算式を精緻に作っていくことを通じて、需要予測を立てていき、それに沿って事業計画を立てるわけです。そしてより大切なことは、この数字を何%改善することができれば、売上高はどれくらい伸びるんだってことが、同様に計算で求めるわけです。だとすれば、この今言った三つの数字のうち、どれをどういう施策で高めますか、というマーケティング政策の作戦だけに使えるわけなんです。


先ほどのケースでは、この商品知っていますか?という問いに0.8あれば、もう十分すぎるほど知られていると言えますよね。ただ、この商品があなたのライフスタイル好みに合うか?が0.3だとすれば、ここが弱いなということで、ここ5%でも改善できたらかなり効果があるなということで、もう少し多くの人の興味関心を引けるような商品に改善をすれば売り上げがアップが図れる。そして何よりも、配荷率がたかだか15%だとすると、この商品を扱ってもらえる店舗数を増やせば、ぐんぐんと伸びる可能性があるわけで、配荷率こそ大切なんだ、これを改善するのが一番大切なんだということになる。まさにこの「条件付確率」の考え方を応用していけば、マーケティングの具体的な施策まで落とし込んでいけます。かつその結果がどれくらいの売上高になるか、ということまで推定がついていくということになるわけです。めちゃくちゃ大切な考え方ですね。



ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの例


実際、森岡さんがユニバーサル・スタジオ・ジャパンでどういうことをやったのか具体的な例をお話していきましょう。


実際のところ、さっきの掛け算です。


知っている割合、自分の好みに合う割合、アクセスできる割合、ということで言いますと、「ユニバ知ってますか?」はほぼ問題ないわけです。何もここで、認知度を上げるための施策をしてもしょうがないですよね。名前を連呼するような全国ネット放送でテレビCMやったところで、需要が伸びるわけじゃない、これはやるべきことじゃないな、ということが見えてくるわけですね。


続いて、これは自分の好みに合うかな、この好みのことを森岡さんはプリファレンスという言い方をしたりするんですけれども、今回、ここが弱いということになった。このユニバーサル・スタジオ・ジャパン、もともとはアメリカ映画のショーケースの発想だったので、ジョーズだとかをやっていた。でも、なかなか日本人のハートに響かない…。ジョーズを見たことがないとすると、「全く自分に興味関心ないね」ということになるわけです。


ここを改善すれば、一気にこのユニバに来る方を増やせる可能性があると踏んだわけです。ここで実際にユニバが実行したのが、ワンピースのショーを実施したり、エヴァンゲリオンを取り扱ったり、ハリウッドムービーの中でも日本人抜群の知名度を誇るハリーポッターを使ったり、そしてスーパーマリオ導入したりということで、国民の興味関心度が高いものをたくさんやる。それぞれが、「自分の好みに合う」の確率を改善してくれる。ここを改善するのが一番有効だよねとなったわけです。それぞれのコンテンツが持っているファンの人数分だけ、顧客数がアップする、という計算が立つわけです。


そして合わせてもう1個やったことと言えば、「アクセスできる割合」。大阪にあるユニバがどれくらいの商圏を持っているかと言えば、本当に大阪の範囲だけだけじゃ、困っちゃうわけです。このユニバを目的に、東京から来る、九州から来る、海外から来るということを実現すれば、商圏が広がり、売上増が見込める。ということで、いろんな旅行プランと抱き合わせにしたり、ツアーに組み込んでもらったりするという形で、大阪以外の商圏にアプローチをすることを通じて、お客さんを集めていったわけです。


このように、森岡さんはこのマーケティングという活動を、結果が見えないお金の出費・費用にするのではなくて、これくらいお金を使う、ここに使えばこれくらいこの数字が改善するから、結果売上がこれくらい伸びるはずだという確率という名前の「見える結果」へと投資するものへとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの経営を変える、というのが彼の出した最大の貢献だったわけです。


条件付確率はマーケティングに関して最も重要な概念のひとつ

この「条件付確率」という考え方、様々な統計学の考え方の中でも、ひょっとしたら、特にマーケティングに関して言えば、最重要かもしれない。この考え方というのは、P&Gさんでも電通さんにおいても、そしてユニバーサルスタジオにおいても、様々なところで当たり前のように応用され、使われている重要なマーケティング手法になっているんです。


ぜひ皆さんも、あなたのビジネスがどういう掛け算になっているのか、どういう条件付き確率のもとにあるのかっていうのを考えてみてください。そして、それぞれの数字細かく数字まで出せなくても、「ああ、自分のビジネスでこういう掛け算で成り立っているんだよな」が見えてきたならば、あなたのビジネスを改善するためには、動向を改善すればいいのかすぐに判断がつくようになってくるはずです。


ちなみになんですけど、このYouTubeだとかのWebマーケティングというのは、もう端的に、この掛け算というのがめちゃくちゃ効いています。私のチャンネルなんかも典型例なんですけれども、知っているテーマである、自分にとっての関心事である、というようなテーマ選定ひとつで、桁が一つ二つ違うような結果が出てくるんです。コンテンツの魅力以上に、どういうテーマを扱うかが大切になる。今日、ウェブマーケティングにタッチしている人にとっては、基本常識となっているビジネススキルだということも、知っておきましょう。


何より、よく知られているテーマを扱うべきだし、ターゲットの人生において重要となるようなことを扱うべきだし、マーケティングを実施していくにあたっては、媒体はもう何よりもターゲットによって一番目に触れるものを選ぶこのようにして、一つ一つの条件付き確率の数字を最大化していくわけですね。


そんなわけで、ぜひこの確率思考の戦略論をあなたの力に変えていただけると願っています。







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