行動経済学の魔法!あなたの脳が数値予測を外す理由(利用可能性ヒューリスティクス)【行動経済学4】
今回は利用可能性ヒューリスティクスという現象について解説しようと思います。
で、こんなクイズからスタートしてみたいと思います?
「うき」から始まる言葉と、「うき」で終わる言葉、どちらの方が多いでしょうか?という問題です。
皆さんこの問題は、ちょっと頭を使って、分析的に考えてみてもらいたいんです。どんな言葉があるかな?って、検討してみながら。その上で、皆さんだったらどちらの方が多いと思いますか?
実は、この問題は、行動経済学が対象とする人間の、ごくごく人間らしい思考のパターンを知る上で、非常にわかりやすい例だったりするわけです。
というわけで、皆さん是非この問題を考えながら、今回のお話を聞いていただければ嬉しく思います。
「ヒューリスティクス」の特徴
行動経済学は、何をやる学問であるのか?といえば、人間の人間らしい意思決定、ってどういうふうに行われるのか、この日常、私達が暮らす中での様々な経済的な判断というのがどういうふうになされるのか、これを分析していきます。
キーワードは、「ヒューリスティクス」という言葉。ヒューリスティクスとは、人間が素早く、なるべく楽に答えを出せるように行う、固有の思考プロセスのこと。限られた情報から、推理を働かせる力。スピードのために、若干の正確さを犠牲にしている思考法です。
この「ヒューリスティクス」って、どんな風に働くのかな?これが、行動経済学の1つの大きな関心事になるわけです。
利用可能性(availability)
そして、この数多あるヒューリスティクスの特徴の中でも、最も重要なものの1つとして知られるものが、利用可能性です。英語で[availability]という単語になるんですけれども、利用可能性というのは、人間が何か判断をしたり考えたりするときには、脳みそがパッと手じかな情報、最近インプットされたものとか、よくよく聞いてるもの。すなわち、脳にとって、利用可能性が高い情報。それを使って考えるというのが、どうやら人間の脳の非常に大きな特徴らしいということがわかってるんです。
私達は、日常の意思決定の中では、20年前のことを思い出しながらなんて判断しません。そんなこと、当たり前のように思うかもしれません。でも、コンピューターであれば、時代の新しい・古いに関係なく、適切にその問題を解くのに1番正しい情報を引っ張ってきます。
人間に関して言うと、最も最近の情報が、最も強く印象に残っている。あるいは、何度も何度も聞いた言葉が、1番脳の印象に残っているので、こういう最近聞いたものや沢山聞いたもの、そういう情報から物事を判断する傾向があるのです。
この利用可能性って何なのか?ということを知る上で、ここでもう1問皆さんに考えてもらいたいと思います。最初に出題した問題は、最後に答え合わせをしますので、まずはこちらの問題を考えてください。
利用可能性ヒューリスティクスと脳の錯覚
日本人の死因って何がどれくらい多いのか?って話です。
コロナ前の平常時で、考えていきましょう。2019年、日本の死亡者数は、年間138万人でした。この138万人のお亡くなりになられた方が、どういう理由で亡くなったのか?この3つについて考えてもらいたいと思うんです。
「殺人」
「交通事故死亡者数」
「癌」(がん)
さあ、皆さん考えてみてください。それぞれ何人ぐらいなのか。
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実は、答えはそれぞれに、桁が違う感じです。
2019年日本人の死亡者数138万人のうち、殺人でお亡くなりになられた方というのは、なんと年間わずかに293人なんです。
多くの方が、もっと多い人数をイメージしたんじゃないですか?これが、皆さんの脳みその利用可能性です。皆さんの脳みその中には、様々な殺人事件のニュースがすごい入っていますから毎日のように、そういうことが起こってるようなイメージがある。
しかもですよ、皆さん名探偵コナンとか、刑事ドラマを見たりするわけですから、ああいうのも、どんどんどんどん沢山人が、お亡くなりになられるシーンがあるから・・・これがめちゃくちゃ印象付けられている。恐らく、多くの方は数千人ぐらいで予想したんじゃないでしょうか?数万人と考えた人もいるかもしれませんね。
実際のところは、わずか293人ということで、日本において殺人というのは極めてレアな犯罪なんです。世界的に見て日本の殺人率というのは最も低い水準に抑えられています。
それでは第2に、「交通事故死亡者数」は何人ぐらいなのか?交通事故の死亡者数は3215人です。この交通事故の事故死亡者数というのは、交通安全センターなどでも教えられているので、その時の数字を覚えていて、1万人ぐらいかな?6000人ぐらいかな?と、そういう推測をたてた人もいるかもしれません。実は現在では3000人と、かなり減っています。
何年か前に、何千人になったという情報も1つの利用可能性ですし、やっぱりこれも、ほとんど毎日のように交通事故死亡者のニュースが流れていることが大きい。これが脳みそに強くインプットされているがために、皆さんは恐らく交通事故死亡者数も、過大評価をされたんじゃないでしょうか?
それでは第3に、「癌」はどうか?という話ですけども、癌は、約37万人ということで、この3つの中では圧倒的に癌、日本人の死亡原因第1位は癌なのです。日本人の3人に1人は癌でお亡くなりになられている。
でも皆さん、癌でお亡くなりになる人数って多分、過小評価したんじゃないですか。
なぜか?もうお分かりですね。
癌で死亡したという話は、ほとんど皆さんが日常生活で耳に入ってこないからです。情報の利用可能性です。利用可能性が低いため、あなたの脳が「癌でたくさんの人が死んでるよな?」というところに、すぐに思い至らないから、皆さんは癌での死亡者数というのを少なく見積もってしまう。
かくして、この死亡者数の見誤ってしまう原因というのは、冗談でもなんでもなく、大真面目に、皆さんがサスペンスドラマやアニメの見すぎ、あるいはニュースの見過ぎによってなんです(笑)。別に、見過ぎが駄目って言ってるんじゃないです。私達の脳は、そういうものなんだ!ということです。
私達はこの、利用可能性が高い情報に惑わされて、物事を過大評価してしまったり、過小評価してしまったり、判断を誤ってしまうわけなんです。
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で、最初の問題。「うき」で始まる言葉と「うき」で終わる言葉。どっちがどれくらい多いのか?って話ですけれども、「うき」から始まるほうが遥かに連想しやすいですね。情報の利用可能性が高いんです。
皆さんすぐ、浮き輪・浮き足・ウキウキする・・・とか、そういう言葉が浮かんでくる。逆に、「うき」で終わる言葉をイメージしてくださいと言われても、なかなかイメージできなかったはずです。利用可能性が低いんです。
でも、例えば「ひこうき」とか、「くうき」というものがあったりします。思い浮かびましたか?
で結局のところ「うき」で始まる言葉は151個。
それに対して「うき」で終わる言葉は630個。
ということで、「うき」で終わる方が遥かに多いんです。
ここで皆さんに1つ、そう言えばそうだ!と皆さん思いなることをお伝えしますと・・・さっき私、「ウキウキ」って言葉を挙げたじゃないですか。
これが、「うき」から始まる言葉だということは、すぐ気づいたはず。
それでは、この言葉が「うき」で終わる言葉だと気づいた方は果たしてどれくらいおられたでしょうか?
これが、私達の脳の特徴、利用可能性です。
CMは有効
こういう事実を踏まえるなら、私達は、普段のビジネスや経済活動をしていく中で、何に注意をすべきか。
第1は、やっぱりこういう間違いを犯しやすい、ということを知っておくことです。脳みそは、直近に聞いた話に非常に強く影響を受ける。こういう傾向があるんだ、ということを理解した上で、ちょっと待てよと冷静に考えてみようじゃないか、ちゃんと情報を集めてみようじゃないか、この1回グッとブレーキを踏むことが、一番大切なことです。
そして第2には、この利用可能性ということをビジネスに利用するなら、やっぱりCMは有効だということです。何度も情報を聞かされた商品ほど、皆さんが物を買うときの第1候補になるんです。
例えば、スマホ。ここに4つのブランドを用意してみました。iPhone、Galaxy、HUAWEI、OUKITEL。この4つのスマホが、同じ品質・機能だったとしましょう。で、価格は一番最初のものから高い順です。さて、皆さん何を買いますか?
品質・機能が全く同じで、お値段が一番高いとしても、皆さんiPhoneかGalaxyを選ぶと思うんです。
なぜかと言えば、「名前を聞いたことがあるから」「見たことがあるから」です。ここでぜひ気がついてほしいのは、聞いたことがある、見たことがあるというのは、実際の製品の価値や品質とは全く関係ありません。実際のところ、iPhoneとかGalaxyはいい商品ですよ笑。でも、たくさん聞いてる、たくさん見ているということでこそ、あなたは信頼をおいているんです。
ちなみに私が使っているスマホは「OUKITEL」のスマホです。2万円のとってもいいスマホですよ!
という訳で、皆さんぜひ、情報の利用可能性というものに、私達の脳が左右されることを知っておきましょう。
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