top of page
執筆者の写真功一 中川

行動経済学で、ビジネスはどう変わるか【行動経済学2】

ビジネスパーソンのためのやさしい行動経済学2




※YouTubeにて各シリーズ連載中!



行動経済学第2回といたしまして、今回は、行動経済学がビジネスや人生の中で、どういうふうにお役に立つのか、行動経済学を学ぶ理由学ぶ意義をお話していきたいと思います。


第1回のおさらい

まず第1回のおさらいということで、行動経済学ってどういう科目だったのか?ということを押さえておきたいと思いますが、行動経済学というのは・・・ざっくり言ってしまうと、経済学+心理学だということですね。


従来の経済学で、人間の心の側面をあんまり気にしていなかった。そこで、人間の心の部分、心理学の知見というのを入れたらより良く、人間の経済的な行動を説明できるようになるんじゃないのか?ということ。高度に発達した脳は、とても不思議な心理を生み出。だから、自分たちの心を知ることで、世の中で起こっている不思議な現象に、説明がつく。かくして今注目されているのが、行動経済学なのです。


前回は、この行動経済学というのが、どういう学問なのか?ということを中心的に説明しました。今回はちょっと2つ3つぐらいの例を紹介しまして、行動経済学って面白いな、役に立ちそうだな、というあたりを感じ取ってもらいながら、話をしていきたいと思います。


取引相手の心理を理解し、マーケティングに応用

そんなわけで、行動経済学が生きるシーン。その1、取引相手との交渉時。相手の心理を上手に相手の心理を知って、うまく進めることができるようになります。


典型的には、マーケティングですね。顧客心理を知って、どういうふうに提案したら、うまく売れるのか、行動経済学はそんな場面で生きます。


一例を紹介してみましょう。例えば英会話だとかゴルフだとか、テニスだとか、何でもいいんですけども、習い事をしよう!ってことありますよね。


習い事をしよう!ってときに、スクールに行くと3つぐらいコースが書いてある。上図のようなコース設定。


さて、皆さん考えてみてくださいね。

あなただったら、どれを選びます?


A,世界的なトッププロが在籍していて、エリート養成コースで、月30万円から。あなたに徹底的にテニスだとか英会話だとかピアノとかそういうのを教えます!っていうコース。


B,トッププロだけじゃなくて日本ランキング上位のプロもいるんです、こちらだいぶお買い得になっておりまして、なんと月3万円から受けられるんですよ!


C,こちらは一般的なコースでして、こういう有名な先生じゃないんですけれども、それでも有名なインストラクター講師がいましてレギュラーコースと位置づけておりまして、こちらが月3000円からと大変お安くなっております!


さあ、皆さんどれを選びますか?というように見せられたとする。ここで、大変面白いことに。こういうふうに三つを並べると、Bが選ばれる割合が増えることがわかってるんですね。


これって何なのかというと、極端の回避効果というの現象。人間は両極端を嫌うんです。一番極端なことっていうのは、やりすぎかな?と感じる。極端を見せることで、真ん中が妥当かな、と感じるのです。


ここでのポイントは、Aを最初に見せてることです。思い出してください。

Aは、世界のトッププロで、月30万円!という見せ球を出しているわけです。


何かのレッスンに月30万って・・・そうそうかけられないじゃないですか?これを見せられるとその次に見せるBのコース。


いや、そこまでじゃないんだけど、日本の日本ランキング上位の人たちが教えてくれて月3万円ですよ!って言われると、10分の1で済むのか、それでも日本ランキング上位の人、これコスパいいじゃん!って見えてしまうわけですよ。


でもですよ、よく考えたら・・・習い事で月3万円なんてめちゃくちゃ高い習い事なんですけどね。もし、Aがなくて、B、Cだけだったら。皆さんCを選ぶと思うんです。ところが、最上位コースがあることによって、真ん中の月3万円コースが一般的なのかな、というふうに、感じるわけです。


実際、体感してください。以下の通り、BとCの二つだけだったら、皆さんどういうふうに判断するでしょうか。感じ方がだいぶ変わることを実感ください。

自分の判断の質を高める


行動経済学を学んで、できるようなこと。その2は、自分の判断の質を高めること。私達が経済に関わる意思決定をするときに、こういう癖があるんだよな!ってのがわかると、自分の意思決定のレベルを上げられるわけです。


また別の例をちょっとお見せしていきたいと思うんですけれども、例えばこんな感じです。

伝染病が流行しています。


新しい、疾病が見つかる。この病気を放置していると、死者は年間、600人ぐらい出てしまう。対策プログラムとして、私達の前には2つの案がある。


これ有名な、ノーベル賞を取った人たちがやった実験の例です。「アジア病実験」として知られています。


  • A.確実に200人が助かる。

  • B.3分の1の確率で、600人全員助けられるが、3分の2の確率で、600人全員死亡する。


期待値は同じです。どっちも期待値にすると200人助かるということになりますけれども、Aは確実に200人。Bの方だと3分の2の確率で1人も助からなくなってしまう可能性があると。こういうふうに表現された。さて、どちらを選びます?


では、1回ここで頭をリフレッシュしましょう。そして、次の場合はどう感じたでしょうか。


  • C.確実に400人死亡する

  • D.3分の1の確率で、600人全員助けられるが、3分の2の確率で、600人全員死亡する。

Dは同じですね。Cのところの表現が変わっただけです。確実に、400人が死亡してしまう、と。皆さん、どう判断したでしょうか?同じ問題だ、と分かってはいても、感じ方がだいぶ変わるんだということは、すでに分かったのではないかと思います。


さて、この実験結果はというと、以下のような結果になります。


フレーミング効果



プラスを重視するのか、マイナスを重視するのかによって、人の判断は変わってしまうんです。


これをフレーミング効果と言います。

どっちも同じことを言ってるんですけど、プレゼンテーションの仕方で、あなたの感情は変わってしまうわけなんですよ。


実際に実験の結果は、こんな感じなんです。Aの、確実に200人助けられます。というふうに言うと、人はAを選びがち、72%がAを選びます。ポジティブに表現されると、ポジティブなものを選びがちなんです。


でもそれがC、Dの方だと、確実に400人が死亡するという事実の方を重く受け止めてしまう。ネガティブに表現されると、悪い面が際立って人の心理では捉えられてしまうんです。


同じことであるはずなのに、ポジティブに表現したか、ネガティブに表現したかで、人の判断は変わってしまうわけです。


この一事を知っているか知らないかでも、だいぶ違うと思いませんか?もう皆さん、騙されずに済みますよね!こうした人の心理の特徴をよく知れば知るほどに、あなたは問題の本質を見誤らず、自分の心理に及ばされずに、より良い判断ができるようになるはずです。


人々の行動を良い方向へ導く



行動経済学を学んで、できるようになること。その3としては、人々の心理を理解することで、人々の行動をより良い方向に導けるようになるはずです。

それってどういうことか?っていうと、例えばこんな例を出すとわかりやすいかもしれない。


また、一個新しい例を紹介しましょう。


2000年ごろの、臓器提供希望者の国別割合です。ドイツが12%。フランスは99.9%。


いやあ、やっぱりフランスは人権先進地域だ。フランス人は、他の人を助けることに心が進んでいるんだと。…そういうわけでは、ないんです。


他の国々も調べているんですけど、分かっている違いはこの1点なんです。


臓器提供の意思表明カードが


  • ドイツ「臓器を提供してもいいという人は、ボックスにチェックを入れてください」

  • フランス「臓器を提供したくない人は、ボックスにチェックを入れてください」


これも本当に、単純な聞き方の違い。


どうやらこの聞き方の違いで、その国の臓器提供割合というのが決まっているということが、なんと研究から明らかになったんです。


これはデフォルト効果と言い、最初の設定がどっちなのかによって人の決定は大きく違ってくる。デフォルトすなわち最初に設定したことから、人は変えたがらない性質があるんです。


皆さんも経験あるはずです。WindowsだとかAndroidだとかの設定、最初の設定から、いじりたくないですよね。


アプリとか入れても、最初の設定変えるとなんか怖いこと起こるんじゃないか、いじりたくないのが人間の心理でして、だとしたら初期設定をあなたがやってほしい方向に調整してあげることで、このデフォルト効果を生かして人々の判断をより良い方向に導くことができるわけです。


こうした行動経済学を生かして、人々の行動をより良い方向に連れていくことを肘でつつく、ちょっとだけ軽く後押ししてあげるという意味で、これをナッジという表現をします。


行動経済学を学ぶと、あなたはこんなふうにして、人々の心理の本質、経済行動に対する本質をつかんで、一つには、取引における相手の心理を知って上手に取引をまとめられるようになります。第2には、自分の判断を、質を、より良くする。私たち人間にはこういうバイアス、囚われ、心理的な効果があるんだ。それを理解して判断をより良くすることができる。そして第3には、そういう人々の心理状態を知って、良い方向に導いていくためにどういうふうに場を設計すればいいのか?制度設計すればいいのか?そういうことができるようになってくるわけです。


こんなわけで、行動経済学を学んでできる未来って結構広がってくるんだな。ってことがおわかりいただけたら幸いで、引き続いてぜひ一緒に、この行動経済学を勉強していきましょう!


Comments


bottom of page