暴露系YouTuberは法的問題のみならず経済・経営的にも大きな問題
最近は、暴露系YouTuberが非常に話題になっていますが、実はこれ、産業社会を崩壊させかねない、非常に危ういものなんです。法的なリスクも非常に高いわけですが、法的にOKかNGかを抜きにしても、社会の存立基盤を脅かす行為であることは間違いないのです。
経営学とは、「経」正しい道に向かうための「営」仕組みをつくるための学問です。この経営学の理論枠組みを用いて、なぜ暴露系YouTuberが問題であるのかを説明しましょう。
(解説動画はこちらです!)
いかなる知識・情報にも必ず価値がある。
大前提となるのは、いかなる知識・情報にも、必ず価値があるということです。
たとえば、今度A社がこんな新規事業に乗り出す…という情報は、投資家にとっても、競合にとっても、取引先にも、また社内の人々にとっても、誰にでも価値があります。それに先んずれば、利益を得られるからです。
また、有名人であろうが、一般の人であろうが、その個人のプライベートな情報もやはり価値を持ち得てしまいます。その情報を知りたい人は、やはり少なからずいるのです(単なる下劣な好奇心を満たしたいという感情からにしても)。
経営学では昔から、ヒト・モノ・カネ・情報が会社の4つの経営資源だと定義してきました。情報は、人材、物的資源、金銭的資源と並ぶ、会社をつくる大変重要な、価値ある資源なのです。
情報は、信頼のもとに、無料で交換されている。
そうした価値ある情報ですが、事業活動のなかでは、対価を払ってやり取りされることのほうがまれです。なぜなのでしょうか。
事業活動を成り立たせるためには、どうしてもお互いの情報を出し合う必要があります。そこで、こうした情報のやり取りをスムーズにするために、人類が長い歴史の中で作ってきた仕組みがあります。それが、信頼です。
相互に、情報を使うにあたって、不正な行為や相手を裏切る行為をしないという信頼が担保されることを通じて、情報は流通可能になるのです。
言われれば、当たり前のことに思われるかもしれませんが、こうした構造に積極的に目を向けるならば、よい企業や、よい地域産業を作ろうと思えば、信頼こそが鍵になることが分かります。
信頼に支えられた企業や地域社会は強い。
たとえばトヨタグループでは、必ずしも資本関係にないサプライヤーであっても、お互いに情報をやり取りすることで、よいクルマを作ります。相互に、裏切り行為をしないという信頼が担保されることで、情報のやり取りが可能になっているのです。
シリコンバレーが数多くのスタートアップを育めるのも、信頼のお陰です。地域のスタートアップやVCが、互いに信頼を育んでいるから、地域で情報がよく流通し、必要なところに人材と金、知恵が集まるようになっているのです。
情報の悪用は、信頼の崩壊であり、それは社会の崩壊である。
こうして、相互の信頼がしっかり築けているうえに、私たちの産業社会は成立しています。
もう、お分かりですね。暴露系YouTuberという活動が、いかに社会にダメージを与えるかを。
相手が信頼のもとに供与した情報を、自己のために悪用する人物が現れれば、もはやその人物の周辺では、信頼が一切機能しなくなるのです。
・信頼が失われたとき、情報の流通は止まります。
・提供された情報の真偽も、怪しくなります。
・正しい情報が欲しいのであれば、常に情報の授受に金銭が発生することになります。
暗黒社会だと、言うほかはありません。
暴露系YouTuberの活動は、リベンジポルノと変わらない。
かつて親しきときに、その親しさゆえに提供した情報が、時を経て親しさが失われたのちに暴露される。
その構図はリベンジポルノと変わりません。
早々に、取り締まられる必要があります。インターネット配信における個人情報保護の在り方が、いまいちど見直される必要があるでしょう。
しかし、法の整備を待つだけが、私たちにできることではありません。
産業社会を健全に保ちたいと願うならば、民間レベルでのルール作りもまた大切です。究極的には、私達一人一人の倫理感ある行動もまた、大切になります。
決して軽くない問題として、また他人事ではない問題としては、本件は私達も早急にアクションをしていくべきでしょう。
(APS学長・中川功一)
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